MBA応募書類──MBA応募前に知っておいてほしいこと

前回のブログでは、ユニークな経歴こそMBAのチャンスになるという話を書きました。今日は少し違った角度から、MBA応募前に知っておいてほしいことを共有したいと思います。繰り返しになりますが、MBAはゴールではなく通過点です。何かを実現するためのステップにすぎません。だからこそ、良い面だけでなく僕自身が「これは事前に知っておいたほうがいい」と感じたネガティブ?要素も含めて考えてほしい。

シンガポールは今日も雨模様。こういう涼しい日はHotpotが食べたくなりますね。そんな気分で、少しゆるく書いていきます。

目次

MBAは「浅く・広く」のジェネラリスト教育

個人的な感覚ですが、MBAは学問としては浅いと思っています。もちろんプログラムによって違いはありますが、シンガポール国立大学(NUS) での僕の経験では、

  • 会計
  • 財務
  • マーケティング
  • 経済学
  • オペレーション

などといったコア科目を浅く広くカバーするのが基本でした。ちなみにNUSは卒業論文もありません。勉強が得意ではない僕でも、ちゃんと卒業できたくらいにはベーシック寄りの内容です。

一方で、例えば会計のキャリアを目指すなら、会計修士の方が圧倒的に専門性は高い。実際、NUSで国際法務を学んでいた日本人の友人は、アジアの企業法務を専門として支えたいという明確な目的を持ち、卒業後は法律事務所でスペシャリストとして働いています。MBAはスペシャリスト育成ではなく、幅広い観点を持ったジェネラリストを作るプログラムだというのが、僕がMBAを受けてみての率直な感想です。

正解がない世界。「It depends」が支配する場所

MBAの授業で必ず耳にするフレーズがあります。“It depends.” 教授から「あなたはどう思う?」と聞かれると、多くの学生がまずこの一言を返します (これってシンガポール国立大学だけ?笑)。なぜなら、ビジネスには絶対的な正解が存在しないからです。日本でもお馴染みのUberを例に挙げると、UberはPlug & Playのグローバルモデルで世界を席巻し、現在もライドシェア市場では圧倒的な1位です。しかし、シンガポールを含む東南アジアではUberを見ませんなぜか?

理由は、ローカライズ戦略の重要性東南アジアでは、交通事情(バイクなど)、決済手段(現金オプション)、ドライバー文化など地域差が大きく、ここに対応したのが Grab。地場の生活者と交通課題に合わせて進化し、最終的にUberをこの地域から退けました。一方で、北米や欧州の都市ではUberの標準化モデルのほうが圧倒的に機能しました。

つまり――同じ事業でも、地域が変われば勝敗が変わるMBAは数学のように「1+1=2」と明確な世界ではなく、いろんな考え方の引き出しを増やす場所僕にとっては、これは良くも悪くも大事な学びでした。

就職迷子になるリスクもある

繰り返しになりますが、MBAはジェネラリスト教育です。だからこそ、どのキャリアに進むべきか迷うという現象がよく起こります。シンガポールのローカル企業・外資系企業は即戦力採用が多く、スペシャリストを求める傾向が強い。一方、MBA学生は現状を変えたいという動機で来ていることも多いです。

  • グローバルで働きたい
  • コンサル業界に興味がある
  • 経営企画に挑戦したい
  • 起業に関心がある

その広さが魅力でもあり、迷いやすさにつながる。加えて、最近ではホワイトカラーの仕事がAIに代替されるというニュースもあり、MBA卒のキャリア形成は以前より複雑化しています。シンガポールでは外国人労働者数が増えていますが、顕著に伸びているのはブルーカラー系。チャンギ空港T5、HDB、モール建設など、現場は人手不足。AIで代替できるのはまだ先です。

さらに個人的な意見ですが、日本人のフルタイムMBA生は転職経験が少ない人が多いNUSには大手企業からそのまま進学する学生が多いですが、初めての転職市場をいきなり海外で戦うのはハードモードです。一方でシンガポール人はLinkedIn、エージェント、ネットワークを駆使して次の会社へスムーズに転職します。これは転職慣れ文化の差がはっきり出る部分です。

だからこそ「自分の目的」を持ってほしい

MBAには、良い点も悪い点もあります。ジェネラリスト教育だからこそ、多様な業界の人が集まり、スペシャリスト教育以上のダイバーシティが生まれるまた、正解のない議論だからこそ、新しい視点や考え方を吸収できる面白さもある。キャリア面でも、これまで見えなかった可能性やポテンシャルを探すには最適な環境です。

大事なのは、良い点と悪い点をしっかり理解したうえで、自分のゴールにMBAをどう活かすか?を考えることMBAは魔法ではなく、あなたの未来を形作るためのツールにすぎません。そのツールをどう使うかは、あなた次第です。

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