少しだけ日本に戻ってきています。LinkedInではすでに告知しましたが、CanCanの日本オフィス解約のための帰国です。2024年8月に日本の小さなオフィスからスタートしたCanCanですが、資金調達、シンガポール法人設立を経て、現在は売上の多くがシンガポールから生まれるようになりました。そのため日本事業はオンラインへ完全移行し、今後はシンガポールをメイン拠点として次のステージへ進みます。CanCanのプロダクトは、いつだって「挑戦」。挑戦を発信するだけではなく、まず自分たち自身が一番挑戦する会社でありたいと思っています。……と、会社の話が長くなりましたが(笑)、今日はMBAの話です。
先月、NUSのキャンパスで今年入学した日本人MBA生たちとランチをしました。いやー、初々しい(笑)。昔の自分を見ているようでした。そして相変わらず日本人は礼儀正しい。「本日はお時間をいただきありがとうございます」みたいな感じで、いやいや、そんなに距離を取らなくて大丈夫です。同じ日本を飛び出して、シンガポールというアジアのど真ん中で挑戦している仲間。僕はNUS MBAに来る日本人を、先輩・後輩というより戦友だと思っています。MBAに来る日本人には、安定したキャリアを持ちながらも「このままでいいのか」「違う業界に挑戦したい」「海外で働きたい」と考え、実際に会社や慣れた環境を離れて海を渡ってくる人が多い。その行動力には、尊敬を超えてちょっと感動します。そしてランチをしながら、自然と話題はMBA後のキャリアへ。自分がMBA生だった頃にも同じようなことを考えていたなと思い出しました。
MBAはキャリアの可能性を広げる。でも、魔法の転職チケットではない
MBAの良いところとして、よく多様性が挙げられます。金融、メーカー、IT、コンサル、商社、スタートアップなど、さまざまな業界・職種から人が集まり、さらに国籍もバラバラ。それまで自分が知らなかった世界の人たちと一緒に学べることは、MBAの大きな魅力だと思います。一方で、他のMasterと比べると、MBAは専門性が薄いとも言えます。例えばAccountingのMasterであれば、大学で会計を勉強してきた人や、実務で会計を使ってきた人が多いでしょう。卒業後も、その専門性をさらに伸ばす方向でキャリアを考えやすい。いわばスペシャリストとして、より良いキャリアを選んでいく。MBAは少し違います。Financeもやる。Marketingもやる。StrategyもOperationsもやる。ビジネスを多角的に見る力が身につく一方で、かなりジェネラリスト的な教育でもあります。すると途中で、自分は卒業後に何をするんだ?となる(笑)。そして誕生するのが、MBAキャリア迷子です。
さらに難しいのが、MBAを取ったからといって、未経験の仕事に簡単に転職できるわけではないこと。特にシンガポールの転職市場は、日本以上にジョブ型・即戦力採用の色が強いと感じます。企業から見れば重要なのは、MBAを持っているかだけではなく、これまで何をやってきて、入社したら何ができるのかです。メーカーで営業をしていました。MBAを取りました。じゃあ明日からシンガポールでInvestment Bankerになります!……というほど簡単な世界ではありません。MBAはキャリアの可能性を広げてくれます。でも、MBAは魔法の転職チケットではありません。
MBA後のキャリア、「5つ」を一気に変えなくていい
だから僕は、MBA後のキャリアを考えるときに職種・業界・ロケーション・タイトル・給与の5つに分けて優先順位を考えることをおすすめしています。MBAを取ると、海外で働きたい、業界も変えたい、職種も変えたい、タイトルも給与も上げたい……と全部欲しくなる。でも、全部を一度に変えるのは難しい。例えばシンガポールで働くことが最優先なら、まずはこれまでの職種や業界に近いところで海外経験を作り、その後に業界や職種を変えていく。一方で、未経験の業界への挑戦を優先するなら、日本へ戻って転職するのも立派な戦略です。
MBA留学をすると、せっかく海外MBAに来たんだから、海外で就職しないと意味がないっと思ってしまう人もいます。でも、僕はそうは思いません。むしろ日本転職/企業の良いところの一つは、シンガポールと比較すると未経験の領域へ挑戦する窓口がまだ比較的開かれていることだと思っています。業界未経験からコンサルティングファームへ転職したり、大手IT企業や総合商社などがMBA人材を採用したりするケースもあります。日本でもジョブ型雇用が広がっているとはいえ、海外と比べれば、まだメンバーシップ型の考え方が残っている企業もあります。今何ができるかだけではなく、ポテンシャルや将来的な成長を含めて採用してもらえる余地がある。これは、日本の採用市場の良いところでもあります。一方、2〜3年で転職する人が珍しくないシンガポールでは、日本以上にジョブ型・即戦力採用の色が強い。そのためMBA卒業生であっても、完全未経験の領域に入り込むハードルは決して低くありません。実際に「MBA → 日本でキャリアチェンジ → 経験を積む → 再びシンガポール」という道を歩んでいる仲間もいます。
WillとCanの間を、一歩ずつ埋めていく
MBA後の転職では、どうしても理想と現実のギャップが出てきます。だからこそ、自分が将来何をしたいのかというWillと、今の自分に何ができるのかというCanを整理する必要があります。Willだけを見ていると、理想と現実のギャップに苦しくなる。でも、Canだけでキャリアを選んでいたら、せっかくMBAまで来たのに面白くない。だから大切なのは、将来自分がどこへ行きたいのかを明確にしながら、WillとCanの間を一歩ずつ埋めていくことだと思っています。一回の転職ですべてを手に入れる必要はありません。日本に戻ってもいい。シンガポールに残ってもいい。少し遠回りしてもいい。MBAも卒業後の最初の仕事も、ゴールではなくキャリアの途中です。NUS MBAの新入生のみなさん、これから迷うこともあると思いますが、焦らず一歩ずつ。CanCanです!!


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